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則天去私
そくてんきょし |
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作家
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作品
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宮本百合子 |
【 獄中への手紙 一九四四年(昭和十九年) 】 創造という丈の文学でないものは、或る特定の文化層の分解過程の醗酵物なのね。器用に其が飾られ組立てられ心にふれられるが、それは要するに創作ではないのだわ。再現物なのね。文学に創作と、再現物とあり、作家と再現工人とがあるわけです。再現工人そのものに対して何と申しましょうねえ。読者がふさわしい時期に、それが醗酵物であるにすぎないことを知ることが出来ればいいのだし、そのためには、読者に文化的に親切であればいいのです。文芸批評の新しい根本の任務はそこではないでしょうか。 このことでもわたしはお礼を申しとうございます。その気持の湧くところおわかり下さるでしょう? 作家としての確信や自信というものが、「私」の枠からぬけ出るということ、漱石は則天去私と云ったが、そのもっと客観的なそして合理的な飛躍は何と爽快でしょう。「私」小説からの発展の可能が、最近の一つの契機として、事実の叙述はいかにするべきものかという実例で示されたとすれば、あなたにとっても其はわるいこころもちのなさらないことではないでしょうか。 |
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