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天変地異
てんぺんちい
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作家
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作品
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【大正十二年九月一日の大震に際して】 藤、山吹、菖蒲
と数えてくると、どうもこれは
唯事
ではない。「自然」に発狂の気味のあるのは疑い難い事実である。僕は
爾来
人の顔さえ見れば、「天変地異が起りそうだ」と云った。しかし誰も
真に受けない。久米正雄の如きはにやにやしながら、「菊池寛
が弱気になってね」などと大いに僕を
嘲弄
したものである。
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【葉】 新宿の歩道の上で、こぶしほどの石塊がのろのろ這って歩いているのを見たのだ。石が這って歩いているな。ただそう思うていた。しかし、その石塊は彼のまえを歩いている薄汚い子供が、糸で結んで引摺っているのだということが直ぐに判った。
子供に欺かれたのが淋しいのではない。そんな天変地異をも平気で受け入れ得た彼自身の
自棄が淋しかったのだ。
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【天災と国防】 そういう不安をさらにあおり立てでもするように、ことしになってからいろいろの天変地異が
踵を次いでわが国土を襲い、そうしておびただしい人命と財産を奪ったように見える。あの恐ろしい函館の大火や近くは北陸地方の水害の記憶がまだなまなましいうちに、さらに九月二十一日の近畿地方大風水害が突発して、その損害は容易に評価のできないほど甚大なものであるように見える。
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【文学精神は言う】 廃墟のなかに、そしてその上に、打ち建てられるであろう建築は、新らしい様式のものであらねばなるまい。暴風雨や天変地異に堪えるだけの、堅牢さが意図されるだろう。人間の住居にふさわしいほどの、美観が意図されるだろう。居住者に出来る限りの幸福を与えるような、便益さが意図されるだろう。
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【洪水大陸を呑む】 おじさんの声が終らないうちに、画面は目もくらむ閃光で、ぴかぴか、くらッくらッと光り、画面に、ものの形を見わけることができなかった。三四郎は、天変地異のおそろしさに、大きな声をあげてその場にうち伏した。もう画面を見つづける勇気はない。
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【学生と先哲 ――予言僧日蓮――】 しかのみならず日蓮の幼時より天変地異がしきりに起こった。あるいは寛喜、貞永とつづいて飢饉が起こって百姓途上にたおれ、大風洪水が鎌倉地方に起こって人畜を損じ、奥州には隕石が雨のごとく落ち、美濃には盛夏に大雪降り、あるいは鎌倉の殿中に怪鳥集まるといった状況であった。日蓮は世相のただならぬことを感じた。
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【回想録】 何かあの頃は、そういう神秘的なようなことが頻りと行われた。盤梯山が破裂したり、三陸の津浪が起ったり、地震があったり、天変地異が頻々とあって、それにも少年の自分は脅かされた。地震のある時は夜空が変にモヤーッとした異様な明るさがある。之はこの頃学者の書いたものを読んで居たら、事実で、昔から言われていることだそうだ。
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【五重塔】 去る日の暴風雨は我ら生まれてから以来第一の騒ぎなりしと、常は何事に逢うても二十年前三十年前にありし例をひき出して古きを大げさに、新しきをわけもなく云い消す気質の老人さえ、真底我折って噂し合えば、まして天変地異をおもしろずくで
談話の種子にするようの剽軽な若い人は分別もなく、後腹の疾まぬを幸い、どこの火の見が壊れたりかしこの二階が吹き飛ばされたりと、他の憂い災難をわが茶受けとし、醜態を見よ馬鹿欲から芝居の金主して何某め痛い目に逢うたるなるべし、
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【夜明け前 第二部下】 あるものは牛蒡を掘りに行ってこの雹にあったといい、あるものは桑畠を掘る最中であったといい、あるものは引きかけた大根の始末をするいとまもなく馬だけ連れて逃げ帰ったという。すこしの天変地異でもすぐそれを何かの暗示に結びつけて言いたがるのは昔からの村の人たちの癖だ。
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【大菩薩峠 胆吹の巻】 今晩のうちには、無事に戻って参るつもりでございますから御安心下さいまし。もしまた、途中、天変地異の災難がございましたら、心静かに臨機の避難をいたしまして災難をやり過して、それから
徐ろに下りてまいります。いかに疾風暴雨といたしましても、一昼夜のあいだ威力を続けているという例は少のうございますから、その間をどこぞに避難しておりまする間の時間――それを御考慮に入れて置いていただきましても、明朝までには間違いなく戻って参ります。
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Last updated : 2024/06/28