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油断大敵
ゆだんたいてき
注意を怠ると思わぬ失敗をしてしまうことがあるから、十分に気を付けなければいけないという戒め。
作家
作品

福沢諭吉

【学者安心論】

 人の智恵は、善悪にかかわらず、おもいのほかに成長するものなり。油断大敵、用心せざるべからず。ゆえにかの瓜の蔓も、いつの間にかは変性して、やや茄子の木の形をなしたるに、瓜はいぜんとして瓜たることもあらん。

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太宰治

【津軽】

その翌年だかのお盆のとき、たけは私のうちへ遊びに来たが、なんだかよそよそしくしていた。私に学校の成績を聞いた。私は答えなかった。ほかの誰かが代って知らせたようだ。たけは、油断大敵でせえ、と言っただけで格別ほめもしなかった。

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岸田國士

【文芸の側衛的任務】

 ところが、敵は前面にだけいるのではありません。側面からも背後からもわれわれの隙を窺っています。どういう敵でありましょうか? 油断大敵という洒落ではありませんが、正に、それに類する大敵であります。即ち、わが国民の人間としての品位と指導者としての信用を脅す敵であります。

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種田山頭火

【松山日記】

徹夜で句稿整理。
いつとなくどこからとなく鼠が来ている、猫はお先に来ている、油断大敵ですぞよ!
夜々の雨の音はよろしいな、おちつける。

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ツルゲーネフ
神西清訳

【はつ恋】

「もう一遍いっぺん言いますが、ここの雰囲気ふんいきは君にはよくない。君はここで、いい気持になっているが、油断大敵ですぞ! そりゃ温室のなかだって、やはりいい においはするが、そこで暮すわけにはゆかんですからね。ねえ! 悪いことは言わないから、またあのカイダーノフ先生にもどりたまえ」

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夢野久作

【爆弾太平記】

 ……どうしてって君、わからんかね……と……云いたいところだが、そういう吾輩も実をいうと気が付かなかった。朝鮮沿海からドンの音が一掃されたので、最早もはや大願成就……金比羅こんぴら様に願ほどきをしてもよかろう……と思ったのが豈計あにはからんやの油断大敵だった。ドンの音は絶えても、内地の爆弾取締りは依然たる穴だらけだろう。ちっとも取締った形跡が無いのだ。藁塚産業課長の 膝詰ひざづめ談判が、今度は「内地モンロー主義」にぶつかっていた事実を、ドンドコドンまで気付かずにいたのだ。

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海野十三

【宇宙尖兵】

「ベランは、ユダヤの謀者で、本当はシャストルというユダヤ系アメリカ人です。それですから今日はわざと直ぐ送りかえしたのです。ベラン夫人ですか。あれはシャストルの助手にすぎませんが、一足先に別室に監禁してあります。油断大敵とは、よくいったものですなあ」

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Last updated : 2024/06/28