作 家
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作 品
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北原白秋 |
【日本ライン】 一羽 、ふり仰ぐ一大岩壁の上に、黄褐の猛鳥、英気颯爽として留つて、天の北方を睨んでゐる。 |
與謝野晶子 |
【遺書】 丁度私の帰つた日に二羽の矮鶏(ちやぼ)の一羽 が犬に奪(と)られて一羽ぼつちになりましたのを、佐保子(さほこ)が 昨日(きのふ)までに変つて他(た)の兄弟から忌(い)まれて孤独になつた象徴(しるし)であるらしいと台所で女中に云つて聞かせたりもお艶(つや)さんはなさいました。 |
宮沢賢治 |
【銀河鉄道の夜】 そこから一羽の鶴(つる)がふらふらと落ちて来てまた走り出したインデアンの大きくひろげた両手に落ちこみました。 |
野口雨情 |
【十五夜お月さん】 森の中 森の中の 一本桜に 朝晩 小鳥が来て 一羽の小鳥は 一羽の小鳥は どつちの小鳥も |
南方熊楠 |
【十二支考(2)兎に関する民俗と伝説】 わが邦でも昔は兎を八竅(きょう)と見た物か、従来兎を鳥類と見做(みな)し、獣肉を忌む神にも供えまた家内で食うも忌まず、一疋二疋と数えず一羽二羽と呼んだ由、 |
泉鏡花 |
【 貝の穴に河童の居る事】 栗鼠(りす)が 仰向(あおむ)けにひっくりかえった。 あの、チン、カラ、カラカラカラカラ、笛吹の手の雀は雀、杓子は、しゃ、しゃ、杓子と、す、す、す、擂粉木を、さしたり、引いたり、廻り踊る。ま、ま、真顔を見さいな。笑わずにいられるか。 泡を吐き、舌を 噛(か)み、ぶつぶつ小じれに 焦(じ)れていた、赤沼の三郎が、うっかりしたように、思わず、にやりとした。 姫は、赤地錦の帯脇に、おなじ袋の緒をしめて、 守刀(まもりがたな)と見参らせたは、あらず、 一管 の玉の笛を、すっとぬいて、丹花の唇、斜めに 氷柱(つらら)を含んで、涼しく、気高く、歌口を—— 木菟(みみずく)が、ぽう、と鳴く。 社の格子が 颯(さっ)と開くと、白兎が一羽、太鼓を、抱くようにして、腹をゆすって笑いながら、 撥音(ばちおと)を低く、かすめて打った。 |