作 家
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作 品
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芥川龍之介 |
【山鴫】 −−トウルゲネフはもう一度、疎(まばら)な木々の中を透かして見た。が、今度は林の奥も、あら方夕暗(ゆふや)みに沈んでゐた。 この時一発の銃声が、突然林間に響き渡つた。後に待つてゐた子供たちは、その反響がまだ消えない内に、犬と先を争ひながら、獲物を拾ひに駈けて行つた。 |
芥川龍之介 |
【首が落ちた話】 二三発、銃声が後(うしろ)から響いたように思われるが、それも彼の耳には、夢のようにしか聞えない。 |
横光利一 |
【夜の靴−−木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)】 ある日のことを私は思い出す。それは晴れた冬の日のこと、渋谷の帝都線のプラットで群衆と一緒に電車を待っているとき、空襲のサイレンが鳴った。間もなく、B29一機が頭上に顕れた。高射砲が鳴り出した。ぱッと一発、翼すれすれの高度で弾が開いた。 |
石原莞爾 |
【最終戦争論・戦争史大観】 先祖代々武勇を誇っていた、いわゆる名門の騎士も、町人の鉄砲一発でやられてしまう。 |
海野十三 |
【海野十三敗戦日記】 十一月二十四日来襲の敵機は七十機内外で、爆弾は七十発ぐらい、あとは焼夷弾だった。ねらったところの第一は、三鷹の中島飛行機工場らしく、二十発の爆弾と焼夷弾一発が命中した。建物十七、八棟が倒壊、死者二百名、傷者三百名ということだった。 |
海野十三 |
【地球を狙う者】 「おや、弾丸(たま)は一つも減っていない」 僕の予想は裏切られた。銃口を手提電燈の光に照らしてみたが、中は綺麗であった。 「おかしいぞ。ピストルは最近一発も発射されていない!」 僕は失望を感じながらも、一方では博士が殺人嫌疑から遠ざかったことを悦ばずにはいられなかった。 |
海野十三 |
【○○獣】 「オイ給仕、この騒ぎのなかで、新聞なんか読んでいちゃいけないじゃないか。そんな遑(ひま)があったら、壊れた壁を一つでも取りのけるがいい」 喧(やかま)し屋の支配人足立(あだち)は、敬二少年を見つけて、名物の雷を一発おとした。 「ははッ——」と、敬二は鼠(ねずみ)のように逃げだしてビルの崩れた土塊(どかい)の上によじあがった。 |
橘外男 |
【雷嫌いの話】 ところが、ゴロゴロピシャリはなかなかもって、新宿どころの騒ぎではない。行く手も後方もピカピカと、雲を劈(つんざ)く稲妻に囲まれて到頭進退谷(きわ)まって、御徒町(おかちまち)で電車を降りて、広小路(ひろこうじ)の映画館へ飛び込んだら、途端にバリバリズシーン! と、一発落下した。 |
三鳥山人 (みどりさんじん) (夢野久作) |
【豚吉とヒョロ子】 そのうちに無茶先生は表へ出ますと、大きな声で、 「アア。やっとこれで安心した。ドレ、ここで一発放そうか」 と云ううちに、大きなオナラを一つブーッとやりました。 |
織田作之助 |
【猿飛佐助】 「忍術には屁の音は要らぬものじゃが、放屁走尿の束の間にも、夢幻の術を行うという所を見せるために、わざと一発放ってみたのじゃ」 |