作 家
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作 品
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作者不詳 国民文庫 (明治44年) |
【義経記】 総じて勢〔は〕十六人、笈十挺あり。一挺の笈には鈴・独鈷・花瓶・火舎・閼伽坏・金剛童子の本尊〔を〕入れたりける。一挺の笈には折らぬ烏帽子十頭、直垂・大口などをぞ入れたりける。残り八挺の笈には、皆鎧腹巻をぞ入れたりける。 |
作者不詳 国民文庫 (明治43年) 校訂: 古谷知新 |
【源平盛衰記】 酒宴半に烏帽子箱を取出し、中座に候ひて折之て人々に奉賦、不取敢折節なれば、急あわてて折程に、七頭は右に、一頭は左折なるを、而も佐殿に奉る。佐殿あやしとおぼして、七人が烏帽子を見廻し給へば、皆右に折てよの常なり、我身一人左也ければ、不思議也、源氏の先祖八幡殿は、左烏帽子を著給ひしより、当家代々の大将軍左折の烏帽子なるに、今流人落人の身ながら、是を著るこそ難有けれ。 |
岡本綺堂 |
【綺堂むかし語り】 馬車の馬丁(ばてい)もあわてて手綱をひき留めようとしたが、走りつづけて来た二頭の馬は急に止まることが出来ないで、私の上をズルズルと通り過ぎてしまった。 |
伊藤左千夫 |
【水害雑録】 いつでも畳を上げられる用意さえして置けば、住居の方は差当り心配はないとしても、もう捨てて置けないのは牛舎だ。尿板(ばりいた)の後方へは水がついてるから、牛は一頭も残らず起(た)ってる。そうしてその後足(あとあし)には皆一寸ばかりずつ水がついてる。豪雨は牛舎の屋根に鳴音(めいおん)烈しく、ちょっとした会話が聞取れない。いよいよ平和の希望は絶えそうになった。 |
芥川龍之介 |
【煙草と悪魔】 すると、或日の事、(それは、フランシス上人が伝道の為に、数日間、旅行をした、その留守中の出来事である。)一人の牛商人(うしあきうど)が、一頭の黄牛(あめうし)をひいて、その畑の側を通りかかつた。見ると、紫の花のむらがつた畑の柵の中で、黒い僧服に、つばの広い帽子をかぶつた、南蛮の伊留満が、しきりに葉へついた虫をとつてゐる。 |
ジョナサン・スイフト JonathanSwift 原民喜 訳 |
【ガリバー旅行記 GULLIVER'S TRAVELS】 私は通訳の青年のほかに連れはなかったので、彼に一しょに行ってくれるように頼み、二人の乗り物として、 騾馬 (らば )を一頭ずつもらいました。いよ/\出発する前に、まず、使者を一人さきに発たせることにしました。 |
ジョナサン・スイフト JonathanSwift 原民喜 訳 |
【ガリバー旅行記 GULLIVER'S TRAVELS】 船は無事におだやかに進み、一七〇二年四月十日、私たちはダウンスに着きました。ただ、途中でちょっと不幸な事件が起きました。それは船にいる鼠どもが、私の羊を一頭、引いて行ってしまったことです。きれいに肉をむしりとられた羊の骨は、穴の中で見つかりました。 |
芥川龍之介 |
【木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)】 清盛の懐柔政策が彼等の気焔をして却つて、高からしめたる、素より偶然なりとなさず。今や、山門は、二人の猟夫に逐はれたる一頭の兎となれり。二人の花婿に恋はれたる一人の花嫁となれり。而して平氏は、其源軍に力を合するを恐れ、平門の卿相十人の連署したる起請文を送りて、延暦寺を氏寺となし、日吉社を氏神となすを誓ひ、巧辞を以て其歓心を買はむと欲したり。 |
泉鏡花 |
【凱旋祭】 この尾と、その頭と、及び件(くだん)の牡丹の花描いたる母衣とを以て一頭の獅子にあひなり候。胴中には青竹を破(わ)りて曲げて環にしたるを幾処(いくところ)にか入れて、竹の両はしには屈竟(くっきょう)の壮佼(わかもの)ゐて、支へて、膨(ふく)らかに幌(ほろ)をあげをり候。 |
海野十三 |
【恐龍艇(きょうりゅうてい)の冒険】 ぼくの膝は急にがくがくになった。のどがからからになって、声がでなくなった。なぜ? なぜといって、ぼくは見たのだ。ぼくらの恐龍のそばに、もう一頭の恐龍が長い首をのばし、口を開いたり閉じたりして、のそのそしているのであった。 |