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- この詩は、北原白秋が書いた『五十音』という詩です。「あめんぼのうた」「アメンボの歌」「五十音の歌」「あいうえおの歌」「あいうえおのうた」などと紹介されることもありますが、『五十音』が正しい題名です。
- 「かな学習歌」として書かれたもので、「4・4・5 型」の定型詩です。詩の書き出しが「水馬=あめんぼ」なので、「あめんぼのうた」「あめんぼの歌」「アメンボの歌」と、また、「あいうえお」と出てくるので「あいうえおの歌」「あいうえおのうた」と、また正しい表題の『五十音』から「五十音の歌」などとも間違われることがあるようです。
- 五十音の各行の出だしに最初の文字で始まる言葉が置かれ、「ア、イ、ウ、エ、オ」などの各行の文字に関連する言葉が「4・4・5」で全体に配置されています。
- このページでは、漢字の読み方を含めて、全ての文字を原文の下の行に仮名で表記しました。なお、原文では歴史的仮名遣いとなっている部分も現代仮名遣いとしました。「原文」はこちらから、また、発声練習などに読みやすくした「かな」のみの「かなバージョン」のページもご覧ください。
- 縦書きのページも用意しました。こちらからご覧ください。「縦書き原文」「縦書きかな併記バージョン」「縦書きかなバージョン」
北原 白秋(きたはら はくしゅう) | ||
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1885年〈明治18年〉1月25日 - 1942年〈昭和17年〉11月2日 | |
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詩人、童謡作家、歌人 | |
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「五十音」の初出は、1922年〈大正11年〉1月1日、雑誌『大観 第5巻第1号』(実業之日本社) | |
*底本での旧字体は新字体に、歴史的仮名遣いは現代仮名遣いとしました。
「五十音」 北原白秋
水馬赤いな。ア、イ、ウ、エ、オ。
あめんぼ あかいな アイウエオ
浮藻に小蝦もおよいでる。
うきもに こえびも およいでる
柿の木、栗の木。カ、キ、ク、ケ、コ。
かきのき くりのき カキクケコ
啄木鳥こつこつ、枯れけやき。
きつつき こつこつ かれけやき
大角豆に醋をかけ、サ、シ、ス、セ、ソ。
ささげに すをかけ サシスセソ
その魚浅瀬で刺しました。
そのうお あさせで さしました
立ちましょ、喇叭で、タ、チ、ツ、テ、ト。
たちましょ らっぱで タチツテト
トテトテタッタと飛び立った。
トテトテ タッタと とびたった
蛞蝓のろのろ、ナ、ニ、ヌ、ネ、ノ。
なめくじ のろのろ ナニヌネノ
納戸にぬめって、なにねばる。
なんどに ぬめって なにねばる
鳩ぽっぽ、ほろほろ。ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ。
はとぽっぽ ほろほろ ハヒフヘホ
日向のお部屋にゃ笛を吹く。
ひなたの おへやにゃ ふえをふく
蝸牛、螺旋巻、マ、ミ、ム、メ、モ。
まいまい ねじまき マミムメモ
梅の実落ちても見もしまい。
うめのみ おちても みもしまい
焼栗、ゆで栗。ヤ、イ、ユ、エ、ヨ。
やきぐり ゆでぐり ヤイユエヨ
山田に灯のつく宵の家。
やまだに ひのつく よいのいえ
雷鳥は寒かろ、ラ、リ、ル、レ、ロ。
らいちょうは さむかろ ラリルレロ
蓮花が咲いたら、瑠璃の鳥。
れんげが さいたら るりのとり
わい、わい、わっしょい。ワ、イ、ウ、エ、ヲ。
わいわい わっしょい ワイウエヲ
植木屋、井戸換え、お祭りだ。
うえきや いどがえ おまつりだ
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《底本》
白秋童謡集 第五集『祭の笛』
北原白秋 著並訳
大正11年〈1922年〉6月13日 アルス刊
第二部 學問のうた「五十音」
(国立国会図書館所蔵)
大正11年〈1922年〉6月13日 アルス刊
第二部 學問のうた「五十音」
(国立国会図書館所蔵)
*白秋童謡集 第五集『祭の笛』は、「五十音」の初出とされる大正11年〈1922年〉の「大観 第5巻第1号」から半年後の出版。