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職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせ』 に見る、『中世の職業・職人・商人』
= 江戸時代中期、明和六年・1769年版より =

 「職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせ」(明和六年・1769年版) 
「 一 」

 職人尽歌合しょくにんづくしうたあわせは、「七十一番職人歌合しちじゅういちばんしょくにんうたあわせ 」とも呼ばれます。「七十一番職人歌合」は、室町時代中期の1500年末ごろに成立したとされます。この版は彩色模写本で、巻末に、江戸時代中期の明和六年・1769年 の年号が見られます。
「職人尽歌合」には、今日からみれば、不適切と受け取られる可能性のある呼称などがみられます。ここでは、歴史上の事実を理解することを趣旨として、そのままの形で掲載します。
 職人名、職業名は出来るだけ現代の漢字で表記するようにし、読み方も歴史的仮名遣いから現代仮名遣いにしました。例えば一番の「番匠」の「はんさう」は「ばんじょう」と、十三番の「烏帽子折」の「ゑほしおり」は「えぼしおり」としました。
 このページでの「職人尽歌合」は、国立国会図書館が所蔵し公開している画像を引用しています。このページでは、画像を明るくするために当サイト独自の色彩補正を行っており、国立国会図書館が公開している原画とは色調が違います。
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番匠 ばんじょう「我〻もけさは相国寺へ又召され候 暮れてぞかへり候はんずらむ」
※「ばんじょう」「ばんしょう」。大工のこと。
鍛冶かじ「京極殿より打刀を御あつらへ候 大事に候かな かゝるべきと」
壁塗かべぬり「やれ/\、うばらよ 家にて鏝猶とりてこ 壁の大工まいりて候 下地とくして候はばや」
檜皮葺ひわだぶき「この棟がはらがをそき」
※檜の皮で家根を葺く職人。
とぎ「さきがおもき 今少をさばや 主に問ひ申さん はばやさはいかに、手を切るぞ」
塗師ぬし「よげに候 木掻のうるしげに候 今すこし火どるべきか」
※漆細工の職人。
紺掻こうかき「たゞ一しほ染めよとおほせらるゝ」
※紺屋(こうや)。染物屋。
機織はたおり「あこ、やう くだもてこよ」
檜物師ひものし「湯桶にもこれはことに大なる なにのために、あつらへ給ふやらむ」
※檜の薄板で曲げ物を作る職人。
車作くるまづくり「檳椰の輪とて、よくつくれとおほせ候」
鍋売なべうり「播磨鍋かはしませ 釜もさふらうぞ ほしがる人あらば仰られよ 弦をもかけてさう」
酒造り さかづくり「先酒召せかし はやりて候うすにごりも候」
油売あぶらうり「きのうからいまだ山崎へもかへらぬ」
※点灯用の油を売る行商人。
餅売もちいうり「あたゝかなる餅まいれ」
筆結ふでゆい「兎の毛は、毛のうらおもて見えぬが大事にて候」
筵打むしろうち「てしま筵かうしまへ 御座も候ぞ」
炭焼すみやき「けさ出でさいまうたか」
小原女おはらめ「あごぜは、まいりあひて候けるか」
※「大原女」とも。京都洛北の八瀬や大原の女性が、黒木(くろぎ)と呼ばれる薪や、炭を頭にのせて売った。
馬買おうむまかおう
※牛馬を売り買いする商人。「むま」は「馬」のこと。『平安以降、「むま」と表記した例が多い(小学館・日本国語大辞典)』
皮買おうかわかおう
※獣の皮を売り買いする商人。
山人やまびと「ことしは秋より寒くなりたるは」
浦人うらびと「この縄、はや切るゝは たがうれ」
木樵きこり
草刈くさかり「伏見草とて、世にもてなさるゝみまくさよ」
烏帽子折えぼしおり「今時の御烏帽子は、ちとそりて仕候」
扇売おうぎうり「扇は候 みな一ぽん扇にて候」
帯売おびうり「此帯たちてのち見候はむ いそがしや」
白粉売しろいものうり「百けも、なからけもいくらも召せ いかほどよき御しろいが候ぞ」
蛤売はまぐりうり「ひげのあるは、家の恥にてさうぞ ことのほかなるひげのなきかな」
魚売いおうり「魚は候 あたらしく候 召せかし」
弓作ゆみつくり「此弓は弦を嫌はんずるぞ にべおり、大事なるべき」
弦売つるうり「弦召し候へ ふせづるも候 せきづるも候」
挽入売ひきれうり「これは因幡合子にて候 召せ」
※「挽き入れ」は、大小同形の容器を重ね入れる入れ子の容器のこと。
土器作かわらけつくり「赤土器は召すまじきか かへり足にて安く候ぞ」
※素焼きの陶器を売る者。
饅頭売まんじゅううり「けさは、いまだ商ひなき、うたてさよ」
法論味噌売ほうろみそうり「われらもけさ、奈良より来て、くるしや」
※「法論味噌」は、日に干した焼味噌に香辛料を混ぜたもの。
紙漉かみすき「さゝやかしが足らぬげな」
賽磨さいすり「さしちがへの賽も召し候へ 犬追物のいきめも候ぞ」
※双六に使う賽(さい)を作る者。「賽」は、「賽子(さいころ)」のこと。
鎧細工よろいざいく「仕返しの物は、札頭がそろはで」
轆轤師ろくろし「木が足らで、いそぎのもの遅くなる いかゞせむ」
草履作ぞうりつくり「じやうりじやうり 板金剛召せ」
硫磺箒売いおうほうきうり「ゆわうはゝきゆわうはゝき よき箒が候」
※火を移す時に用いる硫黄を塗った付け木と、かまどの掃除に用いられる荒神箒こうじんぼうきを売っている。
傘張かさはり「荏の油が足らぬげな」
足駄作あしだづくり「目のゆがみたるから、心地あしや」
翠簾編みみすあみ「近衛殿より御いそぎの翠簾にて」
唐紙師からかみし「糊がちと強ければ、きらゝを入れよ」
一服一銭いっぷくいっせん「粉葉の御茶、召し候へ」
※路傍で茶を点て、一服を一銭で売る商人。
煎じ物売せんじものうり「おせんじ物おせんじ物」
※茶や薬草を煎じた飲み物を売る商人。
琵琶法師びわほうし「あまのたくもの夕煙、おのへの鹿の暁のこゑ」
※僧の格好で琵琶の弾奏とともに物語などを語った芸能者。ほとんどが盲目であった。
女盲おんなめくら「宇多天皇に十一代の後胤、伊東が嫡子に河津の三郎とて」
※「瞽女(ごぜ)」とも。鼓、後に三味線を伴奏に唄った盲目の女芸人のこと。
仏師ぶっし「阿弥陀の像、先蓮華座をつくり候 おりふし法師ばらたがひて、手づから仕候」
経師きょうじ「この巻切り、いかにしたるにか 切り目のそろはぬよ」
蒔絵師まきえし「此御たらひは、沃懸地にせよと仰られ候 手間はよもいらじ」
貝磨かいすり「この太刀の鞘は、莫大の貝が入べき」
※青貝などの貝殻をすって螺鈿細工をする職人。
絵師えし「墨絵は筆勢が大事にて候」
冠師かぶりし「別当殿の御拝賀に召さるべき御冠にて候 いそがしや」
鞠括まりくくり「難波殿は大がたを御このみある」
沓作くつつくり「鞠沓は、はたかなるがわろきと」
立君たちぎみ「すは御らんぜよ けしからずや よく見申さむ 清水までいらせ給へ」
※街頭で客を引く娼婦。
辻子君ずしぎみ「や、上臈いらせ給へ ゐ中人にて候 見しりまいらせて候ぞ いらせ給へ」
※夜、辻に立って客を引く娼婦。「図子君」
銀細工しろかねざいく「南鐐のやうなるかねかな」
薄打はくうち「南鐐にて、打いでわろき」
針磨はりすり「こばりは針孔が大事に候」
※「針磨」は、縫い針作りの職人。
念珠挽ねんじゅひき「数とりと七へんの玉、むつかしきぞ」
紅粉解べにとき「御べにとかせ給へ 堅べにも候は」
鏡磨かがみとぎ「白みの御鏡は、磨ぎにくゝ侍」
医師くすし「殿下より続命湯、独活散を召され候間、たゞ今あはせ候」
陰陽師おんようじ「われらも今日は、晦日御祓持参候べきにて候」
「 一 」



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Last updated : 2024/06/29