『神隠しされた街』
若松丈太郎さんの詩と全国原子力発電所・原子力施設の半径30km圏内地図
著作権に鑑み一部分の引用のみとしています。
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ
このような書き出しで始まる、
『神隠しされた街』という詩があります。
1994年に書かれた詩です。
それから17年後の2011年 3月11日。
誰も想像だにしなかった「東日本大震災」。
そして、
誰も想像だにしなかった「原発事故」。
この『神隠しされた街』には、
その、
誰も想像だにしなかった
「原発事故」を予言したかのような言葉がちりばめられています。
しかし、それは「予言」ではなく、
詩人の若松丈太郎さんは、その日が来るのを知っていたのです。
若松さんは、チェルノブイリで見た現実を、
自分が住む東京電力福島原発近辺に置き換えて、
それでも、現実にならないことを祈りながら、
詩にしました。
現実にならないことを祈りながら…。
2011年3月。
しかし、それは、現実になりました。
「避難訓練をしているから安心だ」
「モニタリングポストを設置したから安心だ」
だから、
人々は、
安心していました。
いや、人々は、
安心した振りをしていただけだったのかもしれません。
人々は知っていたのです。
「避難訓練をするのは危険がそこにあるからだ」
「モニタリングポストを設置するのは危険がそこにあるからだ」
そして、それは、
2011年、
現実になりました。
詩人の若松丈太郎さんは、
東電福島原発から30kmの範囲の、
具体的な町の名前をあげ、
避難を余儀なくさせられることを書きました。
『神隠し』にでもあったように、
人々がいなくなった街の情景を書きました。
一篇の詩として。
11日目の5月6日から3日のあいだに9万2千人が
あわせて約15万人
人びとは100㎞や150㎞先の農村にちりぢりに消えた
半径30㎞ゾーンといえば
東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町 富岡町
楢葉町 浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約15万人
私たちが消えるべき先はどこか
私たちはどこに姿を消せばいいのか
そして、それは、
17年後の、2011年、現実になりました。
『神隠しされた街』は、現実になりました。
詩はこう結ばれます。
うしろで子どもの声がした気がする
ふりむいてもだれもいない
なにかが背筋をぞくっと襲う
広場にひとり立ちつくす
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・ 原発を選択して半径の距離を設定することができる地図もあります |