2. 兎を「
羽
」と数える由来は?
- 兎を 「
羽 」と数える由来には諸説があるようです。 - ① 長い耳が鳥の羽のようだからとする説。
- ② 骨格が鳥に似ているからとする説。
- ③ 二本の足で立つ兎を鳥に見立てて、鳥と称して食べたとする説。
- ④「ウサギ」を「ウ・サギ」と分解して発音し、「
鵜 」と「鷺 」の二羽の鳥であるとする発音説。
[ 編集注:この場合は、一度に二匹いることが前提の数え方ということになるでしょうか ] - ⑤ ぴょんぴょんと跳ねる様が飛ぶ鳥のようだからとする説。
- ⑥ 肉が鳥肉に似ているからとする説。
- ⑦ 耳を括って持つことがあり、括ったもの、束ねたものを数える「
一把 」「二把 」から、鳥にも似ているので「一羽」になったとする説。 - ⑧ 網を使った捕獲方法があって、鳥を捕る方法に似ているからとする説。
- ⑨ 兎を聖獣視する地方で、そのほかの獣と区別する意味合いで数え方を変えたとする説。
主なものを上げてみますと、
など様々です。
そして、これらの多くは、『獣の肉を食べることが許されなかった時代』『獣の肉が禁忌とされた時代』に、『鳥に見立てた』という理由が付けられて巷間語られることがしばしばあります。
それを裏付ける一つの文献としては、大正時代に書かれた、
南方 熊楠 の『十二支考』が上げられます。南方は次のように言っています。『十二支考(2)兎に関する民俗と伝説』 南方熊楠従来兎を鳥類と見做 し、獣肉を忌む神にも供えまた家内で食うも忌まず、一疋二疋と数えず一羽二羽と呼んだ由、
南方熊楠[慶応3年(1867)〜 昭和16年(1941)]
和歌山県生まれの博物学者、生物学者(特に菌類学)、民俗学者。南北アメリカやイギリスで研究活動を続け、生物学の分野では「粘菌」の研究で名高い。諸外国語、民俗学、考古学に精通し、柳田国男をして「わが南方先生ばかりは、これだけが世間なみというものがちょっと捜し出せようにもない」と言わせた。[出典:青空文庫]
「十二支考」は、大正3年(1914)から、大正12年(1923)までの10年にわたって雑誌に連載された。[]しかしここでは、「一羽二羽と呼んだ由」と、伝聞のような表現でしか語られておらず、いつ頃からそのように言われていたかなどを、文献などによって検証するまでに至っていないのは若干残念な点ではあります。
由来については、この他に、鳥に見立てたのには格別の理由はなく、一種の「
洒落 」から始まったのではないかとする説もあります。上記のような様々な理由から鳥に似ているため、猟師などが「洒落」で、鳥を数える「一羽」を使っていたのではないかとする説です。また、次の項で述べますが、室町・江戸時代の文献に、「
片耳 」「一耳 」「二耳 」などと数えていたということも残されています。
このように、兎を 「
羽 」 と数える由来には諸説がありますが、『鳥に似ている』というのがキーワードということになるでしょうか。
・文献などによる情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
次は、「一羽 」以外の兎の数え方を見てみます。