市川団十郞
『若緑勢曾我 江戸森田座 市川団十良 ういらううり』
昭和63年・1988年刊 立教大学近世文学研究会編『資料集成 二世市川団十郞』より
- このページは、参考にした文献の文字をそのまま起こしたものです。
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せつしや
親方と申はお
立相にもさき立て御ぞんじの方もこさりませうお江戸を立て廿里
上方
相州小田原いつしき町をおすぎなされてあを物町をおのぼりへお出でなさるれはらんかんばしとらや藤左衛門たゞ今ゑんさい竹重元朝より大
晦日迄をの/\様の御手に入まする此とうちんこうと申
薬むかしちんの国のとう人ういらうと申もの
我朝に来り此めいほうをてう
合仕りぢやくにもちいたとござる時のみかどよりゑいふんにたつし御しよもう遊ばされしにういらう此くすりをふかくひしてかんふりの内に入おき用ゆる時は一りうつゝかんむりのすきまより取いだすゆへにみかどより其名をとうちんとうと給はる則文字にもいたゞきすく
香とかいてとうちん
香と申
只今は薬ことの外ひろまりとうちんかうといふ名は御
意なされず世上一どふにたゞういらう/\とおよびなさるゝりよくはいながらさいかまくらお大みやうさま方御さんきん御ほつそくの折から御かごをとめられ此薬何十
貫文とおかい被成下されまする
若御立の内にもあたみかとうのさわへとうじに御出なさるゝか又はいせへ御
参宮のぢぶんはかならずかどちがいを被成ますなお下り被成は
左御上被成は右の方町人でござれ共やづくりは八方か八つむね
表が三つむねぎよくたう
作りはふぬはきくに桐のとうの御
紋を御しやめん有てけいづたゞしき薬でござる近年は此薬やれうれるはやると有て方々にかんばんを出し小田はらの
炭だはらの灰だはらのさんたはらのとな付ほうろくにてあやまちをねつてそれになべすみをくはへあるいはういなんういせつういきやうなどゝにたるを申せ共ひらかなを以てういらうと致たは親方ゑんさい
計此薬のなりにおきを付られませううへはいづの御山成を致て丸下は平らにいついたる所ぢきに丸くいつく所を以てゑんさいとなのるみせはちうやのあきないくれて四つまて四方かなあんどうをたて
若者共入かはり立かはり御てに入ます尤ねだんは一チりう一せん百りう百せんたとい何百貫おかい被成てもいつかな/\まけもそへもいたしませぬ去ながらふるまいまするは百りう二百りうでもいといはいたさぬさいせんから薬のかうけん計申ても御存のない方にはこせうの丸のみ白川よふねさらばはんりうつゝふるまいませう御ゑんりよなしにおてを出してつんで御らうしませいおきにいつたらかさねて小田はらお通のせつおかい被成れ下ませう第一か男一とうの早きつけ舟のゑい酒の二日ゑいをさますうを鳥木のこめんるいのくい合せ其外たんを切て声を大をんい出ㇲりくちん八しん十六へんせいほうさいまつをあやまたずかんれいうんのみつをかんがへうんほうのほやく御口中に入ッて朝日に霜のきゆるごとくしみ/\と成て能匂ひをたもつはな紙の間御入ㇼ被成ては五匁十匁で御かいなされた匂ひ袋やかけがうのかはりが仕る先一りうあがつてこらうしませい口の内はすゞしさがかうへつなものくんふうのんどより来り口中ひりやうをせうず去によつてしたのまはることか銭ごまかはだしでにけるどのやうなむつかしいことてもさつはりといふてのけるは此薬のき妙せうこのないあきないはならぬさらは一
粒たべかけて其きみ合を御めにかけやうひよつとしたが廻りたすとやもたてもたまらぬさああわやのどさたらなしたにかきばとてはなの二つは口びるのきやうちうかいごうさはやかにうくすつぬへめゑれへあかさたなはまやらは一べきへぎほしはぢかみほんまめほんごめぼんごほうつみ立つみ豆つみ山本しよし山のしやそうぢうこゞめのなまかみ/\こんこゞめのこなまかみしゆすひじゆすゝししゆちんふくばく/\三ぶくばく合せてぶくばくむぶくばくあのなげしの
長なぎなたはたかなぎなたぞ向ふのごまがらはいぬごまからかまごまからかあれこそ本のまごまからから/\ひい/\風車おきやがりこぼし/\
夕部もこぼして又こほしたたゝたふほたゝぶほゝちりから/\つたつほたほ/\ひたこをちたらにてくはふにてもやいてもくはれぬ物がごとくてつきうかなくまどうしに石くまいしもちとらくまとらふく中にもとうじのらせう門はいばらきどうしかうてくりこんがうつかんでおむしやるかの頼光のひざもとさらずにふなきんかんしいたけ定てこたんはそば切うどんかぐどんな小しほちこたなのこしたにこおけにこみそかこあらすこ程にこじやくしこもつてこすくてこよこせをとかてんだこゝろへたんほの川さきかな川ほどかや
走つてとつ川ゆけばやいとをすりむくさんり計か藤沢平つかおゝいそがしや小いそのしゆくを七つ過して
早天早々さう
州小たはらとうちんかうかくれこさらぬ御ういらうにやく男女きせんくんしゅの花のお江戸の花ういらうあの花をみて心をおやはらきやつといふうぶ子はふ子に至迄此ういらうの御
評判御存ないとはいわれまいまい/\つぶりつのだせほうだせぼう/\まゆにうすきねすりばちばち/\/\とろ/\/\くはら/\/\とはめをはつして今日御出のかた/″\様へうらねはならぬ上ヶねはならぬといきせい引ッはり薬のもとしめやくしによらいもせうらんあれとほゝうやまつてういらういらつしやりませぬか