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心に響く日本語・心に残る日本語  
  君死にたまふことなかれ 與謝野晶子 
  一握の砂 石川啄木 
  蜘蛛の糸 芥川龍之介 
  小さき者へ 有島武郎 
  檸檬 梶井基次郎 
  枕草子 清少納言 
  土佐日記 紀貫之 
  走れメロス 太宰治 
  坊っちゃん 夏目漱石 
  吾輩は猫である 夏目漱石 
  草枕 夏目漱石 
  白鳥の唄 若山牧水 
  風立ちぬ 堀辰雄 
  銀河鉄道の夜 宮沢賢治 
  風の又三郎 宮沢賢治 
  雨ニモマケズ 宮沢賢治 
  方丈記 鴨長明 
  外郎売 (ういろううり) 
  日本の色の名前 [色の和名] 
  漂泊者の歌 萩原朔太郎 
  動物園にて 萩原朔太郎 
  竹とその哀傷 萩原朔太郎 
  弁天小僧 河竹黙阿弥 
  白波五人男 河竹黙阿弥 
  三人吉三廓初買 河竹黙阿弥 
  与話情浮名横櫛(切られ与三) 
  「落葉」「山のあなた」 上田敏訳 
  汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也 
  サーカス 中原中也 
  月夜の浜辺 中原中也 
  荒城の月 土井晩翠 
  夏の花 原民喜 
  長崎の鐘 原民喜 
  長崎の鐘 永井隆 
  学問のすすめ 福沢諭吉 
  アメリカ独立宣言 福沢諭吉 
  『平家物語』 祇園精舎 
  『平家物語』 那須与一 
  日本国憲法 前文 
  日本国憲法 戦争の放棄 第九条 
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竹とその哀傷
= 心に響く日本語にほんご・心に残る日本語にほんご =

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竹とその哀傷


萩原朔太郎 「月に吠える」より




地面の底の病気の顔

地面の底に顔があらはれ、
さみしい病人の顔があらはれ。

地面の底のくらやみに、
うらうら草の茎が萌えそめ、
鼠の巣が萌えそめ、
巣にこんがらかつてゐる、
かずしれぬ髪の毛がふるえ出し、
冬至のころの、
さびしい病気の地面から、
ほそい青竹の根が生えそめ、
生えそめ、
それがじつにあはれふかくみえ、
けぶれるごとくに視え、
じつに、じつに、あはれふかげに視え。

地面の底のくらやみに、
さみしい病人の顔があらはれ。


草の茎

冬のさむさに、
ほそき毛をもてつつまれし、
草の茎をみよや、
あをらみ茎はさみしげなれども、
いちめんにうすき毛をもてつつまれし、
草の茎をみよや。

雪もよひする空のかなたに、
草の茎はもえいづる。




ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。




光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。

      ○

  みよすべての罪はしるされたり、
  されどすべては我にあらざりき、
  まことにわれに現はれしは、
  かげなき青き炎の幻影のみ、
  雪の上に消えさる哀傷の幽霊のみ、
  ああかかる日のせつなる懺悔をも何かせむ、
  すべては青きほのほの幻影のみ。


すえたる菊

その菊は醋え、
その菊はいたみしたたる、
あはれあれ霜つきはじめ、
わがぷらちなの手はしなへ、
するどく指をとがらして、
菊をつまむとねがふより、
その菊をばつむことなかれとて、
かがやく天の一方に、
菊は病み、
えたる菊はいたみたる。




林あり、
沼あり、
蒼天あり、
ひとの手にはおもみを感じ
しづかに純金の亀ねむる、
この光る、
寂しき自然のいたみにたへ、
ひとの心霊こころにまさぐりしづむ、
亀は蒼天のふかみにしづむ。




あふげば高き松が枝に琴かけ鳴らす、
をゆびに紅をさしぐみて、
ふくめる琴をかきならす、
ああ かき鳴らすひとづま琴の音にもつれぶき、
いみじき笛は天にあり。
けふの霜夜の空に冴え冴え、
松の梢を光らして、
かなしむものの一念に、
懺悔の姿をあらはしぬ。

いみじき笛は天にあり。




つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむ雪のうへにあらはれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壌にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。


天上縊死

遠夜に光る松の葉に、
懺悔の涙したたりて、
遠夜の空にしも白ろき、
天上の松に首をかけ。
天上の松を恋ふるより、
祈れるさまに吊されぬ。




いと高き梢にありて、
ちいさなる卵ら光り、
あふげば小鳥の巣は光り、
いまはや罪びとの祈るときなる。



 
   
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Last updated : 2024/06/29