蘭
らん
蘭花也。今按ずるに、幽蘭。俗に云う、ほくろ、建蘭。今云う、白蘭是蕙花也。又、秋蘭、鉄脚蘭と名づく。其類魚魫蘭有り。今云う、しらくき。建蘭。
葵
き
あおい。総名也。蜀葵、からあおい、戎葵、同じ。錦葵、今按ずるに、こあおい。荊葵、同じ。
蒿
こう
よもぎ。種類最も多し。図する所青蒿也。一名草蒿、又曰わく、藾、曰わく、蕭、曰わく、萩。皆老蒿之通名也。
菊
きく
かわらよもぎ。菊花也。蘜、同じ。又、黄花、女節花と名づく。夏菊、秋菊、寒菊、其品色甚だ多し。
葒
こう
いぬたで。俗に云う、けたで、葒草也。葓、同じ。一名、蘢古。花を水葒花と名づく。
藍
らん
あい。種類一ならず。図する所蓼藍也。靛花、あいはな、青黛、同じ。靛水、あいしる。
蓼
りょう
たで。青蓼、あおたで、紫蓼、あかたで、水蓼。今云う、いぬたで、葉上に黒点有る者也。
艾
がい
よもぎ。もぐさ。艾蒿也。毉草、灸草、氷台、並びに同じ。
荏
じん
え。白蘇也。荏油、えのあぶら。
蘇
そ
のらえ、紫蘇也。一名、桂荏。水蘇、今按ずるに俗に云う、じゃこうぐさ。一名、香蘇。
苧
ちょ
かろうじ。からお。俗に云う、まお、苧麻也。紵、同じ。
萱
けん
わすれぐさ。萱草也。俗音、かんぞう、諼草、鹿葱、宜男草、並びに同じ。金萱花、今按ずるに俗に云う、きすげ。鹿葱花に似て而斑文無し。其千葉の者毒有りて人を殺す。
葛
かつ
くず。一名、鹿藿。葛粉、くずのこ。
藤
とう
ふじ。蔓草之通称也。図する所紫藤也。一名、招豆藤。紫藤花、或いは、珠藤花と名づく。
茜
せん
あかね。茜草、茜根也。又、茅蒐、茹蘆、染緋草と名づく。
薢
かい
ところ。黄薢也。
莠
ゆう
はくさ。えのこぐさ。狗尾草也。稂はくさ、或いは云わく、いぬびえ、狼尾草也。
莣
ぼう
おばな、すすき、莣草也。芒、同じ。一名、杜栄。今按ずるに、小なるを石芒と曰い、大なるを芭芒と曰う。おぎ、又、芭苐と曰う。
藺
りん
い。今按ずるに、席草也。一名、竜鬚草。莞、おおい、灯草也。又曰わく、灯心草。
藎
じん
かきな。あしい。かりやす。蓋草也。又、黄草、菉竹、王〓と名づく。
茅
ぼう
ち。白茅也。芽を茅針と名づく。つばな、又、荑と名づく。根を茹根、地筋と名づく。管茅、かや。黄花の者を蒯と名づく。
葦
い
あし。俗に云う、よし。初生するを葭と曰う。未だ秀でざるを蘆と曰い、長成するを葦と曰う。笋を𢑆と名づく。あしづの花を芳と名づく。あしのほ。荻、今按ずるに、うみがや、菼、薍、萑、並びに同じ。蒹、すだれあし。
菰
こ
こも。俗に云う、まこも、菰草也。又茭草、蒋草と名づく。菰笋を菰菜、茭白と名づく。菰手、今按ずるに、こもぐるみ、又菰首と名づく。菰根を葑と名づく。
薛
せつ
すげ。薛草也。又曰わく、莎、曰わく、薹。今按ずるに、莎は香附子の苗也。図する所一類にして而差異矣。
菖
しょう
あやめ。菖蒲、昌陽、臭蒲、並びに総名也。水菖蒲、今云う、しょうぶ。又名づく、白昌、渓蓀、水剣草。石菖蒲、俗に云う、せきしょう。
蒲
ほ
かま。香蒲也。蒲笋を蒲蒻と名づく。花抱を蒲槌と名づく。かまぼこ。花上の黄粉を蒲黄と名づく。
蓮
れん
はちす。葉を荷葉と曰う。根を蓮藕と曰う。藕芽を藕蜜と曰う。わかね、花を芙蕖、芙蓉と曰う。未だ開かざるを、菡萏と曰う。実を蓮子、蓮菂と曰う。子房を蓮房、蓮蓬と曰う。
芡
けん
みずぶき。茎を䓈菜、鶏頭菜と名づく。実を芡実、鶏頭実と名づく。
萍
へい
うきくさ。水萍。浮萍也。苹、蓱、薸、並びに同じ。血色の如くなるを紫萍と名づく。蘋、今按ずるに俗に云う、すもも。又、四葉草、田字草と名づく。花を白蘋と名づく。
莕
きょう/こう
あささ。〓菜也。荇、同じ。又、鳬葵、水葵と名づく。
苔
たい
こけ。蘚、同じ。苔衣、水衣、石衣也。又水に在を陟〓と曰う。石に在を石濡と曰う。瓦に在を屋遊と曰う。墻に在を垣衣と曰う。地に在を地衣と曰う。
藻
そう
も。もは。水藻也。葉大なる者を馬藻と名づく。葉細き者を水蘊、鰓草と名づく。海藻、今按ずるに、ほだはら、馬尾藻也。
牡丹
ぼたん
ふかみぐさ。はつかぐさ。牡丹花。又、花王、木芍薬と名づく。
芍薬
しゃくやく
かおよぐさ。芍薬花。又、花相、将離と名づく。
薔薇
しょうび
いばら。〓蘼。牛棘、並びに同じ。総名也。今按ずるに、刺紅花。俗に云う、ごやおき、月季花。俗に云う、ちょうしゅん、月月紅、同じ。野薔薇、のいばら。野薔薇。
棣棠
ていとう
今按ずるに、やまぶき。棣棠花也。或いは、地棠花と曰う。
麗春
れいしゅん
俗に云う、びじんそう。麗春花也。又、御仙花、虞美人花と名づく。
旋覆
せんふく
おぐるま。旋覆花也。旋蕧、同じ。又、艾菊、金銭菊と名づく。
酸漿
さんしょう
かかぢ。ほうずき。又名づく、醋漿、苦葴、灯籠草、金灯籠、紅姑娘。小なる者を苦蘵と名づく。
桔梗
けっこう
俗音、ききょう。きっこう。又、梗草と名づく。
射干
やかん
からすおうぎ。ひおうぎ。烏扇。烏翣、並びに同じ。今按ずるに、射干花之類に蝴蝶花有り。俗に云う、しゃが、蓋し射干にして而其音を誤る也。
鴨跖
こうせき
ついくさ。つきくさ。鴨跖草也。花を淡竹花と名づく。あおばな、笪竹花、碧蝉花、並びに同じ。
芭蕉
はしょう
俗音、ばしょう。一名、芭苴。
薏苡
よくい
すずだま。ずしたま。薏苡子。一名、薏珠子。米を薏苡仁、囘囘米と名づく。円にして而殻厚き者を菩提子と名づく。米を𥽇米と名づく。
𦯇蔚
じゅうい
めはじき。益母草也。又曰わく、蓷、曰わく、鬱臭草。
萹蓄
へんちく
うしぐさ。萹竹、同じ。又、粉節草、道生草と名づく。
夏枯
かこ
うるき。うつぼくさ。夏枯草也。
地膚
ちふ
ははきぎ。にわくさ。又、落帚、独帚、王彗と名づく。
陵苕
りょうちょう
のうじょう。俗に云う、のうぜん。まかやき。陵苕花。又、凌霄花、紫葳花と名づく。
《頭書増補訓蒙図彙》
りょうじょう/のうぜんかずら
菝葜
はっかつ
えびついばら。さるとり。菝〓、同じ。一名、鉄菱角。根を金剛根と名づく。俗誤て以山帰来と為す。
忍冬
にんどう/じんとう
すいかずら。忍冬藤也。一名、左纒藤。花を金銀花と名づく。
玄及
げんきゅう
さねかずら。玄及藤也。実を五味子と名づく。五菋、荎蕏、並びに同じ。
《頭書増補訓蒙図彙》
五味子。玄及、同。
ごみし。げんきゅう
苗
びょう
なえ。凡草。始生するを皆苗と曰う。
薹
たい
今按ずるに俗に云う、とう。蓋し言ば塔也。葶、同じ。
茎
きょう/こう
くき。𦼮、同じ。今按ずるに、茎衣を苞と曰う。はかま草。根を荄と曰う。くさのね。
蔓
まん
今按ずるに、つる。蓋藤蔓大抵木本を藤と為し、草本を蔓と為す。
苞
ほう
今按ずるに、つぼみ。花苞也。又曰わく、芛、曰わく、蓶、曰わく、蓓蕾。苞、又云わく、はかま。
葩
は
はなびら。花葩也。又曰わく、花片、曰わく、花弁。
蕋
ずい
今按ずるに、しべ。花蕋也。蕊、蘃、並びに同じ。又曰わく、花心、曰わく、花鬚。
萼
がく
はなぶさ。花萼也。又曰わく、花蔕、曰わく、花柎。花朶、今按ずるに、はなのえだ。
鶏冠
けいかん
俗に云う、けいとうげ。鶏冠花也。掃帚、扇面、珱洛等有り。皆其花形を以て之に名づく。
竜胆
りゅうたん
えやみぐさ。俗音、りんどう。山竜胆冬凋まず。
馬藺
ばりん
馬蘭、馬棟、茘草、劇草、並びに同じ。実を蠡実と名づく。
鴟尾
しび
今按ずるに俗に云う、いちはつ。鴟尾草也。花を紫羅金と名づく。或いは曰わく、鴨脚花、亦通して蝴蝶花と名づく。
山丹
さんたん
ひめゆり。山丹花也。今按ずるに、渥丹、同じ。一名、紅百合。又紅の外黄白に種有り。
巻丹
けんたん
おにゆり。巻丹花。一名、番山丹。
百合
びゃくこう
ゆり。俗に云う、さゆり。百合花也。其日開け夜合う者を夜合花と名づく。
丈菊
じょうきく
俗に云う、てんがいばな。丈菊花。一名、迎陽花。
鳳仙
ほうせん
鳳仙花。又、金鳳花、来竹桃、小桃紅、菊婢と名づく。
水仙
すいせん
水仙花。単弁の者を金盞銀台と名づく。千葉の者を玉瓏玲と名づく。
秋葵
しゅうき
俗に云う、こうぞ。黄蜀葵也。黄葵、同じ。常に葉を傾けて日に向う。其花一名、側金盞。
春菊
しゅんぎく
今按ずるに俗に云う、こうらいぎく。蒿菜花也。
金銭
きんせん
金銭花。夜落金銭也。一名、子午花。今按ずるに俗に云う、ごじか。
金盞
きんさん
俗に云う、きんせんか。金盞花也。一名、長春菊。
牽牛
けんご
あさがお。牽牛花也。実を牽牛子と名づく。蔓を狗耳草と名づく。
鼓子
くし/こし
ひるがお。鼓子花也。又、旋花、旋葍花と名づく。
剪羅
せんら
剪羅花。剪紅羅、並びに総名也。剪春羅、俗に云う、がんひ。剪秋羅、俗に云う、せんおうけ。一名、漢宮秋。
様錦
ようきん
もみぢぐさ。かるくさ。十様錦。葉早く紅にして而黄緑を兼ぬ。一種雁来て而紅なるを雁来、紅老少年と名づく。
玉簪
ぎょくさん
俗に云う、ぎぼうし。玉簪花。一名、白鶴仙。
石竹
せきちく
なでしこ。とこなつ。石竹花。又、石菊、大菊、錦竹、瞿麦と名づく。千弁の者を洛陽花と名づく。
金灯
きんとう
今按ずるに俗に云う、きつねのかみそり。金灯花、色紅。銀灯花、色白。此草一名、鬼灯檠、無義草。根を山慈姑、天蒜と名づく。
《頭書増補訓蒙図彙》
きんとう/きつねのかみそり。
石蒜
せきさん
俗に云う、しびとばな。烏蒜花、鴉蒜、並びに同じ。皆其根の名也。此草一に天麻と名づく。又一枝箭と名づく。
菫菜
きんさい
すみれ。俗に云う、すまいとり。菫菫菜也。一名、箭頭草。早芹之菫に非ず。
酢漿
さしょう
かたばみ。俗に云う、すいものぐさ。酢漿草。又、酸草、酸母草、雀児酸、三葉酸と名づく。
萍蓬
へいほう
かわほね。萍蓬草。一名、水栗。今按ずるに、骨蓬、亦同じ。
茵蔯
いんちん
ひきよもぎ。俗に云う、かわらよもぎ。茵蔯蒿也。或いは此を以て蘩と為す。
竜芮
りゅうぜい
ふかずみ。うしのひたい。石竜芮也。一名、地椹。苗を水菫、苦菫、胡椒菜、囘囘蒜と名づく。
鼠麹
そきく
ははこ。鼠麹草。又、鼠耳、仏耳、黄蒿、茸母と名づく。
門冬
もんどう
やますげ。俗に云う、じょうがひげ。麦門冬也。又虋冬、烏韭、馬韭と名づく。又天門冬有り。
車前
しゃぜん
おおばこ。車前草也。又芣苡、馬舄、牛舌草、蝦蟆衣、車輪菜と名づく。
防風
ぼうふう
はますかな。はまにがな。其苗を珊瑚菜と名づく。
慎火
しんか
いきくさ。今按ずるに俗に云う、いわれんげ、景天。一名、慎火草。又、戒火、救火と名づく。一種小なる者を仏甲草と名づく。
天茄
てんか/てんきゃ
こなすび。天茄子也。竜葵、苦葵、老鴉眼と晴草、並びに同じ。
山蔥
さんそう
今按ずるに俗に云う、ぎょうじゃにんにく。又、隔葱、鹿耳葱と名づく。
《頭書増補訓蒙図彙》
さんそう/ぎょうじゃにんにく
羊蹄
ようてい
し。俗に云う、ぎしぎし、羊蹄草。又名づく、禿菜、牛舌菜。根を羊蹄大黄と名づく。実を金蕎麦と名づく。葉小に味酸を酸模と名づく。俗に云う、すいどう。
牛膝
ごしつ
いのこずち。牛膝草。或いは、牛〓に作る。又、山莧菜、対節菜と名づく。
南星
なんしょう
おおそみ。天南星也。又、虎掌、鬼蒟蒻と名づく。
積雪
しゅくせつ
つぼくさ。俗に云う、かきどおし、積雪草也。連銭草、地銭草、海蘇、胡薄荷、並びに同じ。
《頭書増補訓蒙図彙》
しゅくせつ/つぼくさ/かきどおし
蛇牀
じゃしょう
ひるむしろ。俗に云う、やぶじらみ。又、虺牀、蛇粟と名づく。
虎杖
こじょう
いたどり。さいたづま。一名、武杖。
杜蘅
とこう
つぶねぐさ。みやまぬなわ、杜蘅、同じ。又杜葵、馬蹄香、土細辛と名づく。
蘹香
かいこう/かいきょう
くれのおも。茴香、同じ。
蒼朮
そうじゅつ
朮。おけら。山薊也。二種有り。蒼朮一に赤朮と名づく。白朮一に枹薊と名づく。
苦参
くじん
くらら。まいりぐさ。又、水槐、地槐と名づく。
山薑
さんきょう
山姜花也。一名、美草。今俗以て良姜と為すは是に非ず。
番椒
ばんしょう
今按ずるに俗に云う、とうがらし。
紅花
こうか
くれない。俗に云う、べにのはな。紅藍花也。一名、黄藍。燕脂べに、燕支、胭脂、𧹬赦、並びに同じ。
紫草
しそう
むらさき。紫。又茈に作る。一名、茈䓞。
蒼耳
そうに
なもみ。おなもみ。又、巻耳、葈耳、耳璫草と名づく。
𦻎薟
きけん
めなもみ。俗音、きれん。豨薟、同じ。又、猪膏母、火炊草、粘糊菜と名づく。
蓖麻
ひま
からかしわ。からえ。俗に云う、とうごま。
蒴藋
さくてき
俗音、そくとく。今云う、そくず。又、陸英、接骨草と名づく。
水莨
すいろう
たがらし。今按ずるに俗に云う、きんほうけ。又、毛莨、毛菫、毛建、天灸と名づく。此草大毒有り。
沢漆
たくしつ
今按ずるに俗に云う、とうだいぐさ。又漆茎、五鳳草、猫児眼晴草、緑葉緑花草と名づく。亦毒草也。
烏頭
うず
或いは曰わく俗に云う、とりかぶと。即、烏頭苗也。人用いて頭虱を治す。其毒〓甚矣。
鼠莽
そもう
莽草。古云わく、しきみ。未だ詳かならず。今図する所其実禾蓼子に似て而弁稜有り。亦至毒ある者也。
防已
ぼうい
あおかずら。俗に云う、つづらふじ。解離、石解、並びに同じ。
絡石
らくせき
俗云、ていかかずら。又、石鯪、石竜藤と名づく。葉頭尖にして而赤き者を石血と名づく。
巻栢
けんはく
いわごけ。いわひば。或いは曰わく是地栢也。巻栢は葉常に巻曲す。
石荷
せきか
今按ずるに、ゆきのした。虎耳草。一名、石荷葉。
風蘭
ふうらん
又、挂蘭、吊蘭と名づく。
玉栢
ぎょくはく
俗に云う、まんねんぐさ。又名づく、玉遂、千年栢、万年松。其長なる者の石松と名づく。
石韋
せきい
いわのかわ。いわぐみ。いわがしわ。俗に云う、ひとつば。又、石䩾、石皮と名づく。
木賊
もくぞく
とくさ。
石帆
せきはん
俗に云う、うみまつ。
石斛
せきごく
いわぐすり。一名、石蓫。
螺厴
らえん
今按ずるに俗に云う、かがみぐさ。又云わく、まめづる。螺厴草。一名、鏡面草。
馬勃
ばぼつ
おにふすべ。又、馬〓、馬𥧔、灰菰、牛尿菰と名づく。