《 コラム - ちょっと知識 》 「鰹節(かつおぶし)」の数え方 検索のヒント ≪≪ 鰹節の数え方へ戻る 「鰹節(かつおぶし)」は、お吸物や味噌汁、煮物、そば・うどんのつゆなど日本料理には欠かせない材料と言っても過言ではないでしょう。表には出てきませんが、陰でしっかりとその仕事をしてくれる重要な調味料です。 「鰹(かつお)」そのものは、日本人が縄文時代から食用にしていたことの形跡が多数の遺跡から見付かっています(青森県八戸遺跡、福島県大畑貝塚など)。 また、「鰹」が調味料として使われた歴史も古く、「鰹」を使った調味料の原型とされる「煮堅魚(にがつお)」「 堅魚煎汁(かつおのいろり) 」が、飛鳥時代の「 大宝律令(たいほうりつりょう) (701年/ )」や奈良時代の「 養老律令(ようろうりつりょう) (718年/ )」の「賦役令(ぶやくりょう)」に重要貢納品として指定されたことが登場します。また、現在の「鰹節」の製造技術の発祥も奈良・平安時代にあったと言われています。 さらに、「鰹」そのものも色々な形で「貢ぎ物」として使われたり「税金」として使われたことが当時の文献や出土品などから分かっています。 [参考:日本鰹節協会編 宮下章著「鰹節 上巻」] このコラムでは、鰹節の数え方やその由来などをみてみます。 「鰹節の数え方」 一本、一節 一連 一束 一対 一折 一台 一片・一掴・一摘 一袋、一パック 一本(ほん)、一節(ふし) 説明を見る・閉じる ■ 一匹のカツオからは、基本的に四本、すなわち四節(よふし)の鰹節が作られます。 ■ 大型のカツオの場合は、三枚に下ろした半身をさらに背側と腹側で二つに切り、四本の節が作られます。これは「本節(ほんぶし)」と呼ばれ、さらに背側の一節を「雄節(おぶし)・背節(せぶし)」、腹側の一節を「雌節(めぶし)・腹節(はらぶし)」と呼びます。 ■ 結納品(ゆいのうひん) の一つとして、この「雄節」と「雌節」の一対(いっつい)が使われることがあります。また、「雌雄一対になる」と言う意味の縁起物として、結婚式の引き出物にも使われることがあり、最近では「削り節」のパックが入っていたりすることもあります。 ■ 小型のカツオの場合は、三枚に下ろした状態のままで鰹節に加工され、一匹から作られる二節は、その形から「 亀節(かめぶし)」と呼ばれます。 【参考】寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」: それからTは国のみやげに鰹節(かつおぶし)をたった一本持って来たと言って笑われたこともある。 【参考】正岡子規 「墨汁一滴」: 堅魚節(かつおぶし)の二本と三本とによりて味噌汁の優劣を争うに至りては 【参考】北大路魯山人「カンナとオンナ」: ぜいたくに、しかもかつおぶしの本当の味を出さずに、使ううちに、いいカンナでかいて使えば、五本使うところが一本ですむ。その方がどれだけ経済的だか分らん 次の作品は、鰹節の数え方ではありませんが、「本節」と「亀節」が登場する作品として引用しました。 【参考】北大路魯山人 「だしの取り方」: かつおぶしはどういうふうに選択し、どういうふうにして削るか。まず、かつおぶしの良否の簡単な選択法をご披露しよう。よいかつおぶしは、かつおぶしとかつおぶしとを叩(たた)き合わすと、カンカンといってまるで拍子木か、ある種の石を鳴らすみたいな音がするもの。虫の入った木のように、ポトポトと音のする湿(しめ)っぽい匂(にお)いのするものは悪いかつおぶし。 本節と亀節ならば、亀節がよい。見た目に小さくとも、刺身にして美味い大きいものがやはりかつおぶしにしても美味だ。見たところ、堂々としていても、本節は大味で、値も亀節の方が安く手に入る。 一連(れん) 説明を見る・閉じる ① 十本、すなわち十節(とふし)をまとめた数え方。 わら縄などで結んだ十本(十節)を一連と言います。 一連ずつ吊して保管する習慣が古代から大正年間まであり、地域によっては最近まで見られたということです。 写真は、大正年間まで行われた鰹節一連(十本)の結び方。③に出てくる、奈良・平安時代の堅魚一連もこのようなものであった。 [参考:日本鰹節協会編 宮下章著「鰹節 上巻」] 写真:鹿児島県山川水産加工業協同組合 『十節の鰹の両端をわら縄で結んでる吊したものを一連といった。(中略)一連に十節を結ぶという習慣が、古代から中世を経て今日まで残っているとは興味あることである』 [日本鰹節協会編 宮下章著「鰹節 上巻 P311」 『毎年御師の大夫殿から、御祓箱に鰹節一連、白粉一箱、折本の暦、本場の青海苔五把、かれこれ細かに値踏みして、』 井原西鶴「世間胸算用」(織田作之助 西鶴現代語訳) ② 結納に使う「背」と「腹」の一対(いっつい)のこと。 「雄節(おぶし)」と呼ばれる背側の節と、「雌節(めぶし)」と呼ばれる腹側の節の二節を結納品として使うことがあり、目録ではこの一対を『壱連(いちれん)』と書きます。 ③ 平安時代などの税金である、「租(そ)・庸(よう)・調(ちょう)」の「調(ちょう)」として貢納した員数で、十本、すなわち十節のまとまり。 平城京跡から出土した木簡に次の記述が見られます。 『伊豆国賀茂郡三嶋郷戸主 占部久須理 戸 占部広遅 調 麁堅魚拾壱斤拾両 員十連三節 天平十八年十月』 これは、「粗(あら) カツオ十一斤十両、員数にして十連と三節を一籠に盛って納めた」という意味で、ここでは「税」として「カツオ」百三本が使われたことが分かります。 [日本鰹節協会編 宮下章著「鰹節 上巻」より] また、同時期の他の木簡にも『九連一丸(きゅうれんひとまる) 』、すなわち「九十本を一つのまとまりにして納めた」など「カツオ」の「連」に関する記述が多数見られます。 『伊豆国加茂郡川津郷賀美里戸主矢田部□麻呂戸平群部嶋調荒堅魚十一斤十両「九連一丸」天平八年十月』 「平城宮発掘調査出土木簡概報(二十二) - 二条大路木簡 一 」 [奈良国立文化財研究所 1990年5月] 一束(そく) 説明を見る・閉じる 十連のこと。 すなわち、十本を数える「一連」を、十まとめた状態で、百本・百節のこと。 一対(つい) 説明を見る・閉じる 結納品として使う場合などの、「雄節(おぶし)」と呼ばれる背側の節と、「雌節(めぶし)」と呼ばれる腹側の節の二節のこと。 「雄」と「雌」で一対となる。 一折(おり) 説明を見る・閉じる 折り箱や桐などの箱に入れて。 また、「折」は、「進物や献上品などの数え方」として古文書に見られる。「折」は「台に載せたものの数え方」とされ、『日葡辞書(慶長八年・1603年)』に「Fitouori. ヒトオリ(一折) 果物その他食物をのせる丈の高い食卓〔膳〕とか、布、絹、紙などの折り重ねたものとかを数える言い方」と見られる。また、三保忠夫著「日本語助数詞の歴史的研究」によれば、『増補詳註用文章(明治三年・1870年)』には「鯛一折」「鮮魚一折」「海魚一折」などが見られ、また、「書礼調」「御家書」などの文献には「臺にのせたるを一折」と見られるとある。 『日葡辞書』は、1603年・慶長8年 [ ] に発行された、日本イエズス会宣教師の編による日本語・ポルトガル語辞典で、昭和55年・1980年に邦訳版が『邦訳 日葡辞書』として岩波書店から出版された。 【参考】夏目漱石 「吾輩は猫である」: 聞きたければ鰹節(かつぶし)の一折(ひとおり)も持って習いにくるがいい、 一台(だい) 説明を見る・閉じる ① 進物や献上品などで台に載せた状態のこと。 ② 神饌(しんせん) や結納などの際、白木の台に載せた状態のこと。 一片(へん)、一掴(つかみ)、一摘(つまみ) 説明を見る・閉じる それぞれ、「削り節」にした状態での数え方。 「一片」は、削った一枚一枚。(主に雅語的に呼ぶ場合) 「一掴」「一摘」は、料理での分量。 一袋(ふくろ)、一パック 説明を見る・閉じる それぞれ、「削り節」にした状態での、主に商品としての数え方。 「一袋」は、「削り節」を袋に入れた状態のこと。 「一パック」は、小さいパックに一回分などを入れた状態のこと。 ≪≪ 鰹節の数え方へ戻る ● 目次 | あ | か | さ | た | な | は | ま | や | ら | わ ● おすすめサイト・関連サイト…